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東京高等裁判所 昭和33年(ネ)2163号 判決

控訴人(被告) 国

被控訴人(原告) 東省三 外一名

訴訟代理人 星智孝 外一名

主文

原判決をとりけす。

被控訴人らの請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

事実

控訴代理人は主文第一ないし第三項同旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、援用、認否はつぎのとおりおぎなうほか、原判決事実らんにしるすとおりであるからここにこれを引用する。

(控訴人の主張する事実)

一、原判決はいわゆる台湾人の日本国籍喪失の時期を降伏文書調印の時と解し、共通法にもとずく控訴人の主張を排斥しているが、みぎ見解は失当である。その理由はつぎにのべるとおりである。

(一)  領土について

従来一般的に認められている国際法の原則によれば、戦争の結果にもとずく領土の割譲は平和条約によつて確定されるのであつて、今次大戦の結果にもとずく中華民国にたいする台湾の割譲についてもこの点に関しては異なるところはない。(日本国との平和条約第二条(b)項、日本国と中華民国との間の平和条約第二条参照)もつとも原判決も指摘するように、今次大戦における日本の講和の場合には、平和条約に先立つ降伏文書において、単に軍事的休戦だけでなくて、政治的、経済的問題とともに領土問題についてもその基本線が定められ、それによれば台湾がわが国の領土から離脱することは確実であつたこと、降伏文書が軍司令官によつてではなくわが国を代表する者によつて調印されたこと、その後平和条約が締結されるまでわが国が連合国の管理下にあつて、台湾に対してはわが国の行政権が停止されていたこと、連合国の管理政策においていろいろの点で台湾人が日本人と異つた取扱を受けていたこと(中国人として取扱われていたのでもない)などは疑いのない事実であるが、それであるからといつて、降伏文書の調印によつて法律上台湾が日本の領土から離脱したものと解すべきではない。カイロ・ポツダム両宣言を含む降伏文書は本来軍事的なものであつて、その意味において正式な条約におけるような憲法上の批准手続を経ないでも有効なものとして認められているのであつて、その中にたまたま領土条項が含まれていても、それは仮講和条項ないし予備講和条約的な性質を併有しているにすぎず、領土の変更はその後の平和条約によつて正式に成立し、平和条約の批准によつて法律的にその効力を生ずるのであつて、降伏文書の中に領土条項が含まれているからといつてそれが正規の手続をふむ平和条約をまたずに最終的効果を生ずることはありえず、最終的な領土処理の効力の実現が平和条約による原則には変りはないのである。なお中華民国は昭和二〇年一〇月二五日台湾につき「受降典礼」なる接収手続を行つてこれを正式に自国領に回復したとしているが、これは中華民国のみの国内的処理にすぎず、国際法的な効力を有するものではない。

(二)  国籍について

従来一般的に認められている国際法の原則によれば、戦争の結果にもとずく領土の割譲に伴つて生ずべき国籍の変動は平和条約によつて決定されるのであつて、今次大戦の結果にもとずく中華民国に対する台湾の割譲に伴つて生ずる国籍の変動についても、この点に関して異なるところはなく、いわゆる台湾人は平和条約の発効とともに日本国籍を失つたと解すべきである。けだし降伏文書は前述のように本来軍事的なものであるから、その中に国籍の変動に関する条項が全然含まれていない場合においては、降伏文書の調印により国籍の変動に関する取りきめまでなされたと解する余地は到底ありえず、国籍の変動は平和条約発効をまつて始めて行われるものと解するのほかはないからである。従つてわが国内法令の面においても、例えば平和条約の効力の発生とともに施行された昭和二七年法律第一二六号の「出入国管理令の一部改正に伴う経過規定」第二条第六項は「日本国の平和条約の規定に基き同条約の最初の効力の発生の日において日本の国籍を離脱する者で、昭和二〇年九月二日以前からこの法律施行の日まで引き続き本邦に在留するものは……」と規定していわゆる朝鮮人、台湾人が平和条約の効力の発生に伴い日本国籍を喪失するものとしているのである。

二、(一) 平和条約の発効とともに日本国籍を失ういわゆる台湾人の範囲如何の点については前記平和条約において、単にわが国が台湾等について主権を放棄することを規定するに止まり、それに伴つて生ずべき国籍変動の範囲如何の問題については明確な規定を欠いているので、この問題については結局これら条約の趣旨とするところに則つた平和条約の合理的解釈にその解決の基礎を求めなければならない。ところで、これら平和条約の趣旨とするところは、カイロ宣言及びポツダム宣言受諾の経緯等よりして台湾をして日清戦争による日本の併合前の状態に復させるにあると解されるので、平和条約の発効と同時に日本国籍を喪失すべきいわゆる台湾人の範囲はその住所が台湾にあると否とを問わず、併合時において台湾人として中国国籍を有した者、及び併合なかりせば台湾人として当然中国国籍をえているであろうと認められるすべての人々が含まれるものと解される。

(二) しかして、台湾は日本の統治下においても一つの異法地域をなし、台湾人は内地と異つた地域たる台湾に属するものとして身分上内地人と截然と区別せられ(共通法第一条第一項第二条第二項)内地、台湾相互間における転籍、就籍、分家一家創立等の自由は全く許されていなかつたのである。もつとも婚姻、縁組等の一定の身分行為によつて一の家を去つて他の家に入る場合のみ、内地と台湾との間に家籍ないし身分籍の変更を来すことが認められたが、(共通法第三条)これらの者が離婚、離縁等の身分変動事由により復籍すべき場合には法律上当然に元の身分に復せしめられたのである。これは夫婦、親子という最も密接な親族関係にあつて共同生活をしていながら互に身分を異にするということは妥当な結果とはいいがたいので、婚姻、縁組等の一定の身分関係が生じた場合にのみ例外的に家籍ないし身分籍の変更を認めたのであるから、右のような密接な親族関係が断たれた場合には、それの本来の身分に戻ることは当然のことであるからである。

(三) そこで、みぎのような共通法の規定は平和条約の発効に至るまで効力を有していたのであろうか。台湾人が平和条約の発効にいたるまで日本国籍を有していたことは既に述べたとおりである。そうであるとするならばその間において前記のような内地人、台湾人という身分上の区別はやはり存在していたものとしなければならないし、その限りにおいて共通法の効力はなおその効力を有していたと考えなければならない。従つて、本件の場合において、内地人竹森光子との入夫婚姻により一旦内地人たる身分を取得した被控訴人省三は、昭和二一年三月一六日光子と離婚したことにより直ちに内地人たる身分を失い、台湾人たる身分に復したことは疑問の余地がなく、平和条約発効当時既に台湾人たる身分を有していたのであるから、平和条約発効に伴い日本国籍を喪失したものといわなければならない、勿論本件の場合において被控訴人省三は現実において台湾の戸籍に記載されてはいなかつた。しかし、戸籍の記載は実体的に形成された身分を公簿に反映するものであつて、戸籍の記載によつて実体的な身分関係が形成されるものでないから、台湾人たる身分を実体上有する者はたとえ台湾の戸籍に記載されていなくとも台湾人であることにかわりはない。したがつてこのような本来台湾の戸籍に入るべきものは平和条約の発効により日本国籍を喪失する関係においては、台湾の戸籍にあるものと同視しうるものといわなければならない。

この点は被控訴人嘉子についても同様であつて、被控訴人嘉子は、かような台湾人たる被控訴人省三と婚姻したのであるから、内地人たる身分を失つて台湾人たる身分を取得し、内地の戸籍から除かれて台湾において創立せらるべき夫省三の家に入るべきものであつたのであり、したがつて平和条約の発効に伴い当然日本国籍を喪失するに至つたのである。

三、原判決は「原告省三は台僑国籍処理弁法によつて中華民国の国籍の恢復を申出ておらず、終戦後同国籍を取得していないことが認められる」と認定したが、みぎ判断はつぎにのべるとおり誤りである。

(一)  行政院民国三五年(昭和二一年)六月二二日公布「在外台僑国籍処理弁法」は民国三四年(昭和二〇年)一〇月二五日(前記台湾につき「受降典礼」なる接収手続が行われた日)現在において、台湾人たる身分を有する者につきその中華民国国籍に恢復することを定めたものであつて、被控訴人省三のようにその後昭和二一年三月一六日に至り台湾人たる身分に復したものについては適用はない。

(二)  みぎ処理弁法は、台湾人は原則として昭和二〇年一〇月二五日以降中華民国国籍を恢復するものとし、例外的に在外台湾居留民で中華民国国籍の恢復を希望しない者は昭和二一年一二月三一日までに所在中華民国の公館または代表部にその旨申出でることによりその許可を受けることができるが、その日までに申出のないかぎり台湾人は自動的に中華民国の国籍を恢復することとしているのであるから、被控訴人省三はその申出をしないかぎり、中華民国に対する関係においては当然その国籍を恢復しているものである。したがつて甲第二号証の中華民国駐横浜総領事館証明書は法律の誤解によるものである。

(被控訴人の主張する事実)

一、ポツダム宣言第八条には「日本国の主権は本州、北海道、九州及び四国並にわれらの決定する諸小島に局限せらるべし」とありしたがつてポツダム宣言を受諾した降伏文書に調印すると同時にわが国は台湾にたいする主権を失つたものであり、みぎ調印後わが国が台湾にたいし主権を行使していないこともあきらかである。

二、中華民国政府はわが国が降伏文書に調印した直後から台湾を統治し、(中華民国政府は昭和二〇年一〇月二五日台湾について「受降典礼」なる接収手続を行い、これを中華民国領としている)台湾人にたいし中華民国の国籍を恢復せしめており、行政院は「在外台僑国籍処理弁法」を公布して在外台湾人についても中華民国の国籍を恢復させてきたのである。

三、連合国も前記降伏文書調印後台湾人が中華民国の国籍を有するかどうかは中国外交使節団が中国人と認めるかどうかによつて決定しており、中国外交使節団は一九四五年一〇月二五日以降台湾人に対し中華民国国籍を恢復させていたのである。

四、わが国政府においても、台湾人の中華民国国籍恢復を認め中華民国国籍を恢復した台湾人にたいしわが国の刑事裁判権のないことをあきらかにしており、(昭和二二年三月二二日司法省刑事局第三五四六号刑事局長の通牒)外国人登録令(昭和二二年五月二日勅令第二〇七号)等においても台湾人を外国人とみなし外交人としての取扱いをしてきた。

五、みぎにのべた占領下の現実とポツダム宣言等の精神から推して、わが国が降伏文書に調印した結果、台湾ならびに台湾人にたいし共通法が失効したとみるのが当然であるから、共通法の適用を前提とする控訴人の主張は失当である。しかして共通法が失効した以上被控訴人らの身分関係はわが国籍法の規定に従うべきものであるから、訴外竹森光子との入夫婚姻により内地人たる身分を取得した被控訴人省三は、昭和二一年三月一六日みぎ竹森光子と離婚しても、他国の国籍を取得しないかぎり日本国籍を失う理由がない。しかして被控訴人省三は中華民国の国籍を取得していないことは原審で証明したとおりで同被控訴人がわが日本国籍を有することは疑をさしはさむ余地がない。

理由

第一被控訴人省三の請求にたいする判断

一、被控訴人省三がその主張の日に台湾台中洲員林郡浦塩庄浦塩二六五番地において、同地に戸籍を有する父陳王、母張氏追の間に生れ、昭和四年八月一日陳氏を廃家して内地人である竹森光子と入夫婚姻し、その後昭和二一年三月一六日同訴外人と協議離婚し、東京都京橋区月島通り一一丁目一番地に一家を創立し、被控訴人主張の日に姓を現姓に変更し、その後現本籍地に転籍したことはいずれも当事者に争いがない。

二、被控訴人は、日本国は昭和二〇年九月二日降伏文書に調印すると同時に台湾にたいする主権を失い、すくなくとも台湾にたいする関係においては共通法はその効力を失つたから、同日以降被控訴人の身分関係は国籍法の規定に従うべきであると主張し、控訴人は日本国が台湾にたいする主権を失つたのは平和条約発効の時たる昭和二七年四月二八日でこのときまでは共通法は台湾にたいする関係においても有効であつて、被控訴人の昭和二一年三月一六日竹森光子と離婚したさいの身分関係は共通法により律せらるべきである、と主張するので、まず昭和二一年三月一六日当時台湾にたいする関係で共通法が有効であつたかどうかの点について判断する。

従来一般的に認められている国際法の原則によれば、戦争の結果にもとずく領土の割譲は平和条約によつて確定されるのであつて、今次大戦の結果にもとずく中華民国にたいする台湾の割譲についても、平和条約によつて確定されたことは「日本国との平和条約第二条b項」「日本国と中華民国との間の平和条約第二条」にてらしあきらかで、したがつて、領土の割譲に伴つて生ずべき国籍の変動もまた平和条約によつて決定されるのであつて、台湾にぞくすべき人は平和条約の発効と共に日本国籍を失つたものと解すべきである。もつとも今次大戦における日本の講和の場合には、平和条約に先立つ降伏文書において、単に軍事的休戦だけでなく政治的、経済的問題とともに領土の問題についてもその基本線が定められ、それによれば台湾がわが領土から離脱することは確実であつたこと、降伏文書がわが国を代表する者によつて調印せられたこと、その後平和条約が締結されるまで日本国は連合国の管理下にあり、台湾にたいしては日本国の行政権が停止せられていたこと、連合国の管理政策においていろいろの点で台湾人が日本人とことなる取扱いをうけていた事実はいずれもあきらかであるが、このことから降伏文書の調印により法律上台湾が日本の領土から離脱したと解することはできない。という訳は降伏文書は本来軍事的なもので、その意味において正式な条約におけるような憲法上の批准手続をふまないでも有効と認められているのであるから、その中にたまたま領土条項がふくまれていたとしても、それは予備講和条約的性質を有するにすぎず、領土の変更はその後の平和条約によつて正式に成立し、平和条約の批准によつて法律的にその効力を生ずるのであつて、降伏文書中に領土条項がふくまれているからといつて、それが正規の手続をふむ平和条約をまたずに最終的効果を生ずることはあり得ず、最終的領土処理の効力の実現は平和条約によるべきであるという原則には変りはないのである。(昭和三〇年(オ)第八九〇号最高裁判所大法廷多数意見昭和三六年四月五日言渡参照)中華民国が昭和二〇年一〇月二五日台湾につき「受降典礼」なる接収手続を行い、これを自己領に回復したとしていることは当事者間に争いのないところであるが、みぎは中華民国の国内処理にすぎず、国際的な効力をもつものではない。また降伏文書調印後の台湾人にたいする連合国の措置ならびに同期間の台湾人にたいするわが刑事裁判件に関する刑事局長の通牒の内容が被控訴人主張のとおりであつたとしても、みぎはいずれも平和条約発効の時までの不確定の状態における措置であつて、みぎの結論の妨げとならない。果してしからば、平和条約発効の時まで日本国が台湾にたいする主権を保持し、台湾人はこの時まで日本国籍を有していたことあきらかであるから、内地人、台湾人という身分上の区別はなお存在していたものというべく、そのかぎりにおいて共通法はその効力を有していたものといわねばならない。

三、ところで、共通法第一条第一項、第二条第二項によりあきらかなように、台湾は日本の統治下において一の異法地域をなし台湾人は内地と異なつた地域たる台湾にぞくするものとして身分上内地人と截然と区別せられ、内地台湾相互間における転籍、就籍、分家、一家創立の自由は全く許されなかつたのである。ただ例外的に婚姻、縁組等一定の身分行為によつて一の家を去つて他の家に入る場合のみ内地と台湾との間に家籍ないし身分籍の変更を来すが、〔同法第三条〕これらの者が離婚、離縁等の身分変動事由により復籍すべき場合は法律上当然に元の身分に復せしめられたのである。けだし、みぎの例外の認められた所以のものは夫婦、親子という最も密接な親族関係にあつて共同生活をしていながら互に身分を異にするということは適切妥当な措置といいがたいからであつて、みぎのような密接な親族関係が断たれた場合にはその本来の身分に復すべきことは当然のことであるからである。

本件についてこれをみるに、前段認定の事実によれば、生来の台湾人である被控訴人省三は昭和四年八月一日陳氏を廃家して内地人竹森光子と入夫婚姻し、その後昭和二一年三月一六日同人と離婚したのであるから、被控訴人省三は竹森光子との入夫婚姻により一旦内地人たる身分を取得したが、同女と離婚したことにより内地人たる身分を失い、台湾人たる身分に復したものといわなければならない。

四、平和条約の発効と共に台湾にぞくすべき人が日本の国籍を失つたものと解すべきことは前示のとおりであるが、台湾にぞくすべき人の範囲如何については平和条約に明かくな規定がないので右条約を合理的に解釈してこれを決定するほかはないが、前示平和条約成立の経過を考えあわせると、台湾にぞくすべき人とは日本の台湾領有の事実がなかつたならば台湾人として中華民国の国籍を有していたであろう人を指称するものと解せられるが、みぎは結局日本が台湾を領有した後において日本の国内法上で台湾人としての法的地位をもつた人と解するのが相当である。(前記大法廷判決多数意見参照)なお台湾が日本領有当時において内地と異なる法域をなし、台湾人は内地人と截然区別せられ、別個独立の戸籍に登載せられていたことはすでに三で説示したとおりであるる。

しかして被控訴人省三が平和条約発効前竹森光子との離婚により台湾人の身分に復したことは前説示のとおりであるから同被控訴人が台湾にぞくすべき人であることは明白で同被控訴人は平和条約の効力発生に伴い、日本の国籍を喪失するものといわねばならない。もつとも本件の場合において同被控訴人が現実において台湾の戸籍に記載されていなかつたことは控訴人のみずから認めるところであるが、控訴人が主張するように戸籍の記載は実体的に形成された身分を公簿に反映するものであつて、戸籍の記載によつて実体的な身分関係が形成されるものでないから、台湾人たる身分を実体上有するものは、たとえ台湾の戸籍に記載されていなくても台湾人であることにかわりはないものといわねばならない。

第二被控訴人嘉子の請求にたいする判断

一、被控訴人嘉子が昭和四年五月二四日被控訴人主張の場所に本籍を有する内地人たる父母の間に生れ、平和条約発効の時の前である昭和二七年二月一二日被控訴人省三と婚姻したことは当事者間に争いがない。

二、しかして、被控訴人省三が昭和二一年三月一六日台湾人の身分に復したことは前認定のとおりであるから、被控訴人嘉子はみぎ婚姻により夫省三と共に台湾の戸籍に記載せらるべきもので、日本国内法上台湾人としての法的地位をもつに至つたことあきらかで、平和条約の発効に伴い日本の国籍を喪失すべきものであることは前段説示したところによりあきらかである。(前記大法廷判決多数意見参照)。

第三上叙のしだいで被控訴人らは平和条約の発効に伴い日本の国籍を失つたものと解するのを相当とするから、被控訴人らの本訴請求はいずれも失当として棄却すべきものである。

みぎと異なる原判決はこれをとりけすべく、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条、第九三条第一項本文、第九五条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 牧野威夫 谷口茂栄 満田文彦)

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